害獣の中でも特に可愛らしい外見をしているアライグマですが、ペットとして飼うのは他の害獣同様難しいです。
そもそも外来生物法にてアライグマをペットとして飼うのは禁止されていて、ペットショップでも販売されていません。
弱ったアライグマや子供のアライグマを保護した場合でも、飼育にリスクが付き纏います。今回は、なぜアライグマを飼えないかの理由などを紹介していきます。
アライグマが日本でペットとして飼われていた背景
冒頭でアライグマをペットとして飼うのは外来生物法にて禁止されていると書きましたが、過去にはアライグマが日本でもペットとして飼われていた時期もあります。
アライグマは元々アメリカやカナダ等の北アメリカ産の外来種です。日本には生息していない哺乳類でしたが、北アメリカからアライグマが輸入されることになります。
日本で「あらいぐまラスカル」のアニメが1977年に放送されて以降、アライグマのペットブームが発生していたのが理由で、主にペット・動物園展示目的で輸入されました。
アライグマの生息を含む生態に関しては下記を参考にしてください。
徐々にアライグマが獰猛で人慣れしない動物であると判明
子供のアライグマはまだ大人しい上に誰かの力を借りないと生きていけないため、大人しくてかわいらしい仕草でペットとして順応します。
しかし、生後6ヶ月を過ぎた頃にはだんだんとアライグマの野生の部分が剥き出しなり、次第に気性が荒くなり室内飼いができなくなる程に暴れ回るようになります。
例えば、アライグマが家中を暴れ回ることで家具が壊れたり配線などをかじられたり、畳や襖・壁が壊されたり等の被害があり得ました。元々アライグマは力が強いため、猫を飼う場合と比べると物損などが激しいです。
アライグマを落ち着かせたり愛でようとしても攻撃的な性格なので噛まれたり引っかかれたりと、飼い主にも牙を剥くことも多々あります。
ペットだったアライグマが野に放たれて野生化して繁殖
気性が荒くなった大人のアライグマは人の手に負える個体ではない場合がほとんどで、アライグマを飼っていた人の多くがアライグマを手放しました。
アライグマを逃がしたりアライグマが脱走したりを繰り返すうちに、アライグマがだんだんと野生に順応していきます。
日本はアライグマにとって幸いにも天敵となる猛禽類が少なく、生存競争を生き残りやすいです。そのためアライグマの繁殖がさらに進み、「害獣」として知られることになりました。
アライグマは庭を荒らしたり屋根裏に住み着いて人に害を与えるだけでなく、絶滅危惧種などに指定されている貴重な虫や小動物・両生類を食い殺したりと、生態系へもダメージを与えています。
2005年にアライグマが「特定外来生物」に指定される
アライグマが繁殖して人や日本に生息する在来種に多大なる害を与えた結果、2005年には外来生物法により「特定外来生物」に指定されました。
特定外来生物とは、外来生物のうち生態系・人の生活・農林水産業などに危害を加える可能性が極めて高いとされる動植物のことです。アライグマ以外だとヌートリア・キョンなどが特定外来生物に指定されています。
ここまでくるとペットというよりもただの害獣で、2024年現在では多くの人が「アライグマは害獣」と認識しています。
過去にはペットとして愛されていたアライグマが今では日本の厄介者に成り下がった問題も見過ごせませんが、それでも人や農作物に被害を与える部分は無視できません。
アライグマをペットとして飼うのは原則禁止
アライグマは過去にはペットとして飼われていた事実はあるものの、現在の日本ではアライグマの飼育は原則禁止です。
外来生物法により「特定外来生物」に指定されたのが主な理由で、同法律内に特定外来生物の飼育禁止が施法されています。
弱ったアライグマや赤ちゃんのアライグマを見つけて保護した場合も同様で、許可なしで飼い続けた場合は6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が科せられます。
ちなみに、アライグマを駆除・捕獲した場合は鳥獣保護管理法により1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑です。
飼育目的以外で飼う場合でも許可を取る必要あり
アライグマを飼いたいケースだと、愛玩用(ペット)以外だと、学術研究目的・動物園での展示などがあります。
これらの目的でアライグマを飼いたい場合でも、外来生物法により「主務大臣(この場合は環境大臣)の許可を得て飼うことができる」とされています。
環境省にて許可の手続きの方法が記載されていますが、個人での飼育は敷居が高く、許可が降りない可能性もあります(ちなみに、こちらからアクセスできます)。
アライグマが獰猛すぎてペットに向かない
仮にアライグマの飼育が日本で許可されていたとしても、アライグマの攻撃性・凶暴性を考慮すると、ペットに向いているとは言えません。
あらいぐまラスカルが流行していた1970年代から1980年代は「猫のようなもの」としてアライグマが販売されていましたが、猫のように人に懐きづらいです。
生後6ヶ月ほどで暴れ回るようになり、腕力や顎の強さから噛まれたり引っかかれたりすると大きな傷になり得ます。動物園の飼育係が世話をするにしても対処が難しいとされています。
法律関係だけでなく、実際問題としてアライグマの飼育は極めて難易度が高いです。赤ちゃんのアライグマを拾ったからといって安易に飼うのはおすすめできません。
まとめ
今回は、アライグマはなぜ飼うことができないかを紹介しました。
特定外来生物として指定されているアライグマは、ペットとして飼うことを外来生物法にて禁止されています。
アライグマの性格を考えても人に懐かない個体に育つ可能性が高く、保護した・拾ったとしても安易に手を差し伸べない方が安全です。
また、アライグマの放獣も鳥獣保護法にて禁止されているため、軽い気持ちでアライグマを飼って、飼えなくなって捨てるのもリスクが高いです。