自宅に巣を作り侵入しているイエネズミですが、ペットとして飼うことはできるのでしょうか?
「弱っているネズミを保護した」「このままネズミ駆除してしまうのはかわいそう」と、様々な感情からイエネズミをペットにしようと考える場合があります。
見た目のかわいさもあってペットとして迎えようと思ってしまうかもしれませんが、イエネズミには感染菌やノミ・ダニが付着しているため、非常に不衛生です。
イエネズミをペットとして飼うのはやや敷居が高いです。今回は、家に住み着くネズミはペットにできるのか?イエネズミ飼育方法などを紹介していきます。
家に住み着くネズミの種類と生態
まずは、家に住み着くネズミの種類や生態を見ていきましょう。
一般的にイエネズミと呼ばれるネズミは「クマネズミ」「ハツカネズミ」「ドブネズミ」の3種で、下記の特徴や生態を持っています。
クマネズミ | ハツカネズミ | ドブネズミ | |
体長 | 15cm~22cm | 10cm以下 | 22~26cm |
外観 | スラっとしている しっぽが長い 目と耳が大きい 体毛は黒寄りの茶色 | かなり小さい しっぽも短いが体長と同じくらいの長さ 体毛は薄い茶色 | 丸々としていて目が小さい しっぽは胴体より短い 体毛は黒寄りの茶色 |
主なエサ | 雑食 特に雑穀等の植物質のものを特に好む | 雑食 特に雑穀等の植物質のものを特に好む | 雑食 肉類・ペットの餌・虫等の肉類を好む |
家の中で出やすい場所 | 家中どこでも・屋根裏や天井は特に多い | 自然が近くにある家に出る・倉庫等にも侵入 | 床下・水のある場所 |
改良品種 | – | マウス | ラット・ファンシーラット |
それぞれの種類の見分け方で一番シンプルなのが「大きさ」です。
3種のイエネズミのうち一番小さいのがハツカネズミで、10cm未満なので出現すればすぐにわかる見た目をしています。
次に小さいのがクマネズミで、こちらは尻尾も長いため判断は容易いです。ドブネズミは3種の中で最も大きいですが、小さい個体や子供の見分けは難しい可能性があります。
また、クマネズミは家中どこでも出現する傾向にありますが、ドブネズミは登り降りする運動が苦手なので屋根裏よりも床下を好みます。水は得意なので水のある場所にも出現しやすいです。
ハツカネズミは自然が多い田舎などでよく見かけます。
ネズミに関するその他の生態や駆除・被害は下記を参考にしてください。
ネズミは「齧歯目」という分類
ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミは、生物学上「齧歯目」という分類です。
前歯が特に発達した哺乳類で、基本的に繁殖能力が高いため自然界で繁栄しやすい種が非常に多いです。イエネズミ以外だとリス・ヤマアラシ・モモンガ・カピパラ等が齧歯目に分類されます。
小型の動物が多くサイズの大きい害獣には基本的に勝てず、イエネズミや他の齧歯目の天敵となりやすいです。
マウスやラット等の品種改良されたネズミとの違い
ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ等のイエネズミと、ネズミのペットとして飼われるハムスター・ラット・マウスとの違いも見ていきましょう。
ラットはドブネズミ、マウスはハツカネズミの品種改良として分類されます。ペットとして普及しているだけでなく、動物実験でも使われることが多いです。
品種改良を経て繁殖されたネズミであるため、野生のイエネズミとは比べ物にならない程清潔です。野生のイエネズミが病原体やノミ・ダニの寄生など、衛生的な問題を多く抱えているのに対して、マウスやラットは人工的に繁殖されていて、野生の体ではありません。
マウスやラットは「無害で触れ合える動物」という位置づけでペットとして飼われています。
勘違いされやすいのが「ハムスター」で、ハムスターは元々は野生で暮らしていて、品種改良を経てペットとして普及されました。ネズミを品種改良してハムスターとして知られたわけではありません。
イエネズミをペットにする方法・飼い方・飼う場合の注意点など
イエネズミをペットにする方法や飼い方・飼う場合の注意点を紹介していきます。
品種改良の個体と違って不衛生かつ不潔なので、絶対に素手で触ってはいけないことは心がけておきたいです。それ以外はペットのハムスターと変わりはありません(イエネズミを飼って懐くかどうかは別です)。
また、イエネズミを飼う場合はイエネズミを捕獲する必要があります。ネズミ捕りのおすすめ商品や種類・選び方は下記を参考にしてください。
そもそもイエネズミはペットとして飼えるのか
イエネズミをペットとして飼うのは、法律的には問題はありません。
野生動物に関する法律は「鳥獣保護管理法」にて捕獲や駆除を禁止する旨が定められています。ただし、第八十条に該当するドブネズミ・ハツカネズミ・クマネズミは環境に影響を与えることから駆除・捕獲禁止の対象から除外されています。
飼育に関しても特に条例にて定められていないため問題ありません。
ただし、ペットにしたネズミは「占有物」として扱われる可能性があり、繁殖して野に放つと動物愛護法違反になる恐れがあります(とはいえ、逃がす際に「ネズミを家から追い出した」と言い訳できます)。
法律上では問題はないものの、衛生的観点から野生のイエネズミを飼うのはリスクが高いです(下述します)。
野生のイエネズミを保護・捕獲した場合は素手で触らない
野生のネズミを飼うと決める際の一番のきっかけとなるのが、家に出ているネズミを捕獲したケースや、出先で弱ったイエネズミを保護したパターンです。
ネズミを保護する場合、気を付けておきたいのが「絶対に素手でネズミを触らないこと」です。
ネズミには様々な病原体や寄生虫からノミやダニまで付着していることが大半です。もしネズミが気力を振り絞って指や掌を噛んだ場合は痛みだけでなく噛まれた部分が腫れあがる鼠咬症のリスクも高まります。
いくらネズミが弱っているからといって素手で触るのではなく、ゴム手袋など噛まれたとしてもダメージがない程度の厚い手袋を用意してネズミに触れてください。
飼い始めた後もペットのネズミを素手で触らない
弱っている間にネズミを簡単に水洗いした・しばらく飼っていたため野生ならではの汚れは落ちたと判断して、ペットとして飼うイエネズミを触りたくなる場合も多々あると思われます。
しかし、いくら水洗いをしてあげてもネズミの内部には病原菌がないとも限りません。ネズミをペットにしてある程度の時間が経ったとしても病原菌は残っている可能性が高く、感染症などにかかるリスクは常に付きまとっています。
また、ペットにしたくらいでイエネズミが人に懐くかどうかも疑問で、素手で触ろうとして噛みつく可能性も考えられます。中途半端に素手で触り逃げられてしまい家の中で害を撒き散らすかもしれません。
ネズミをペットとして迎え入れた後も、ゴム手袋などの厚い手袋の着用は必須です。
ネズミをペットとして飼う場合に必要なもの
イエネズミを飼う方法ですが、必要となるのは「ネズミの居場所」です。
ハムスターやウサギ用のケージがあれば問題はありません。セット購入していればハムスター用の給水器や寝床・床材・トイレも持っているはずです。
床材は新聞紙でも代用が可能で、ネズミはハムスターよりもサイズが大きいためトイレや寝床はモルモットやウサギ用の方がネズミを飼う場合に適しています。
ネズミをペットとして飼う場合の餌
ネズミをペットとして飼う場合の餌も、ハムスターと全く同じで構いません。
ハムスター用の固形フード・細かく切った野菜(キャベツ・人参・果物など)・ひまわりの種などが好物で、ハムスターとなんら変わりはありません。また、「餌にしてはいけないもの」もハムスターと同じで、ねぎ類やチョコレート・にんにく等です。
餌以外にも水が必要です。定期的に給水器の水を入れ替えてください。
掃除について
ネズミをペットにした際にネズミの家として使うケージの掃除ですが、飼い始めの頃は掃除する必要はありません。
確かに病原菌や寄生虫・ノミ・ダニが残っている可能性が極めて高いですが、まだネズミが人馴れしていないため、掃除しようとすると攻撃されたり逃げられたりする恐れがあります。
噛まれたとしたら自身にも感染症被害が発生し、もし逃げられた場合は再度捕まえるのは非常に困難で、他のイエネズミとなんら変わらない害獣へと成り果てます。
時間を空けてから掃除をした方が賢明です。掃除をする場合はネズミを巣となる寝床ごと段ボール箱などに入れてケージの中やトイレを掃除してください。
ペットショップで販売されるネズミやネズミに近い小動物の方が安全
野生のイエネズミをペットとして飼う場合の注意点や飼い方を紹介しました。
基本的には飼うこと自体は可能ですが、衛生問題を多く抱えていて素手でネズミを触ることはできません。また、攻撃的な性格で人に懐かない可能性があります。
弱ったネズミを保護したり捕獲した場合でも、そのネズミをペットとして飼う場合は相応の覚悟が必要です。
ただ単に「ネズミを飼いたい」と考えている場合、ペットショップで販売されているような下記のネズミやネズミと近い小動物を飼うことをおすすめします。